※ネタバレあり
第七話 
開祖と助手の魔学講演
脚本:王雀孫

自分だけでは完成させることの出来なかった研究を未来へ託す──と言えば聞こえは良いが、研究熱心のために人としての道を外してしまう者──よく聞く話だ。その影響が事実上研究者の子孫の立場にあるレイニにも影響を及ぼし続けていた。
 通常の人間ではあり得ないような身体への介入(=魔石を埋めたこと)が彼女の違和感や苦しみの正体であったわけである。そしてその対処とはやはり魅了を「意識して」抑えることだった。魔石の不活性状態こそが不健全な状態だった…ヴァンパイアという語がこの世界では一種のメタファーとして存在しているようだ。
 Bパート、アニスから説明を取り継いだユフィの魔道具開発と精霊信仰の一貫性はやや勢いに頼って演出で少し誤魔化しているような感はあるが、取り立てて言うほどのことでもないような気もする。まあ、アニユフィが見れたので満足です。はい。


総作画監督:
井出直美、松本麻友子、石川雅一
総作画監督補佐:本多美乃


いつも通り。あひるの空同様メインの4人(石川雅一・松本麻友子・井出直美・本多美乃)がキーアニメーターとして総作監修正を行う形となっている。

作画監督:
諸石康太、本田辰雄、KIM JUN O、
KIM MYUN SIM、KIM NA NUM
LO監修:益田賢治
衣装デザイン:鈴木陽子
原画:
八幡佑樹、柴野美奈

+NAMU Animation

直近の2作(聖女の魔力は万能です、異世界薬局)では社内のアニメーター以外は原画や第二原画は基本的にSynodやStudio SUNHAN等が担当することが多かったが、今回はあひるの空ぶりにNamu animationが原画のメインだった。とはいえ、Namu animationとの関係が薄いかと言われればそういうことでもなく、例えばあひるの空(2019〜2020)では2話に1話程度のペースでNamu animationがグロス参加していたことは付言しておきたい。
     
第二原画:
山本祐仁、長島祐樹、勝田綾太、
中島梨緒、
西村都

+NAMU AnimationSynod

ディオメディア社内+Namu animation+Synod。山本祐仁さん、長島祐樹さんは原画経験もある。


制作デスク・進行:岩﨑亮平
制作進行補佐:北永竜希



今までのやつ
設定制作:廣橋奈々恵
制作デスク:岩﨑亮平 
制作進行:
岩﨑亮平(1・4・7話)
阪本拓巳(2・5話)
林優人(3・6話)
制作進行補佐:
北永竜希(1・3・5・7話)
篠原悠斗(2・4・6話)

ありがとう敏腕制作デスク岩﨑亮平…………
もし仮にこのペースでいくとするならば、次の制作進行は阪本拓巳さん、制作進行補佐は篠原悠斗さんということになる。


絵コンテ:清水空翔
演出:胡蝶蘭あげは


このコンビ本当に多いなぁ…清水空翔コンテ×胡蝶蘭あげは演出。ただやはり今回もバリバリキマッている。全体的に、登場する人物の数に比してそこまで複雑な画になっておらず、むしろカット毎の雰囲気や関係性を丁寧に整理しながら配置してるなぁ…という印象を全体的に受ける。

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©2023 鴉ぴえろ・きさらぎゆり/KADOKAWA/転天製作委員会

最初のシーンはかなりわかりやすい。ロングショットで部屋の置物や家具がボヤけ、またキャラは確かに焦点こそ合っているものの、画面の奥に小さく映し出されており、どこかもの寂しい印象がある。レイニの最初の不安感、距離感の遠さを象徴しているかのようだ。

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©2023 鴉ぴえろ・きさらぎゆり/KADOKAWA/転天製作委員会

この作品としては珍しく足元が映し出されている。そしてユフィは歩み寄る。これはおそらくユフィがレイニに対して歩み寄るという描写の強調だろう。レイニの手を取り、そっと握る(ここから色収差)。ユフィの優しさに心打たれ、目を潤めるレイニ。それを暖かい目で見守るアニス。この一連の動線が気持ちいい。
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©2023 鴉ぴえろ・きさらぎゆり/KADOKAWA/転天製作委員会
レイニのヴァンパイアとしての意識をある意味「覚醒」させたシーン。ここではレイニが前に出ることにより、部屋の天井の灯りに隠されたレイニの顔が少し見えるようになったということに注目したい。それはレイニの心境の変化、自らの力に戸惑い迷い悲しんでいたものが少し和らいだ、そのことをどこか示しているようにも感じられる。

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©2023 鴉ぴえろ・きさらぎゆり/KADOKAWA/転天製作委員会

とはいえこれでめでたしめでたしという訳でも無さそうだ。婚約破棄の真相が詳らかとなり、ドラゴン討伐による名声も得て、名誉も回復されたハズにもかかわらず、ユフィはどこか浮かない顔をしていた。ティルティはユフィに問う。アニスがユフィを助手にした理由(前述の名誉回復)は既に達成されていた。それでも助手という立場に残ろうとするのはどうしてなのか。
それを説明するのはいったい何だろうか。2枚目、ティルティから「嫉妬…?」と聞かれて答えに詰まるユフィ(右半分色収差)。その眼の中には、いったいどのような感情を隠していたのか。と考えると1枚目、顔以外すっぽり椅子の後ろに隠されていた描写。この構図の意味もわかってくるように思える。

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©2023 鴉ぴえろ・きさらぎゆり/KADOKAWA/転天製作委員会
そのような迷いを抱えながら窓の外側を見つめるユフィ(1枚目→2枚目は被写界深度の変更、草川啓造氏の遺伝子をどこか感じる)。アニスの助手としてでない自らの将来とはいったいどのようなものなのだろうか、と。
ユフィのいる場所がカーテンにより区切られ、囲まれてやや閉鎖的に見えるのは先程の椅子により殆ど身体が隠されている描写と同様、自らの迷いを独りで抱え込む寂しさなどを指し示すような意図がありそうだ。
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©2023 鴉ぴえろ・きさらぎゆり/KADOKAWA/転天製作委員会

そんなユフィの心を救うのはやはり、空気読めない魔法研究バカのこの女である。知ってたけど。先程の閉鎖的で寂しげなカットとは打って変わって、カーテンの中に2人の姿がすっぽりと入っているのは偶然ではないように思える。見比べると1人と2人という関係性、心情を巧みに描写しているのではないだろうか。今作の小道具や家具は、登場人物間の関係性を描く上での影の役者と言うべきだろう。
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©2023 鴉ぴえろ・きさらぎゆり/KADOKAWA/転天製作委員会
イリアが魔法省からの手紙を渡しに来るシーン。レイニ、アニス×ユフィ、ティルティ、イリアが柵のようなものにより区切られている。だが、アニスとユフィは同じ枠の中に配置されている。3秒とないシーンではあるが、このカットを挿入したことに敬意を表したい。微かな拘り、大事。




以上、執筆時間は前回より長くかかりましたが、ほんへを2回見ることによりまた新たな発見ができて嬉しいです。次は手を抜きます。ちゃんと書こうとすると結構面倒なものですね。もう8話放送なのに7話のブログを今(2023/02/28)投稿しており、時代の趨勢に取り残されたように思います。ありがとうございました。


転天の他の記事はこちらです。なんで僕は結構な話数で感想をブログに投下しているのでしょうか。